瀬名が4位後退し、エマ・夏向・ミハイル・瀬名の先頭集団は折り返し地点を過ぎる。
ここで瀬名は追走しつつも、前を走るミハイルを『観察』する。
瀬名「楽だぜ…この位置。後ろから突かれるプレッシャーを背負って逃げる先頭に比べれば、追う立場の方が集中できる。」
「気が付けば、目の前にいるのは最強といわれるドライバー。世界水準の技術を盗んでやる…!」
そしてコーナーにおいても、瀬名は前3人の走りを観察し、あることに気づく。
瀬名「何だ…?コーナー(リング)が違う…?俺が知っている日本のドライバーは、コーナー前半で減速して、コーナーの後半で加速する…。」
「だが、ベッケンバウアーは、減速も加速もなく、一定のスピードで大きな曲線を描いていく…」
瀬名「この感じは前にも見たな……そうだ。ペニンシュラで片桐の後ろについたときも、同じことを感じたぞ…!」
「あの時、片桐は2速を失っていて、あのコーナーリングはそれをカバーするための緊急避難的な対応だったと思っていたが…思い違いだったのか…?これが欧州育ちのドライバーにとっては普通なのか…?」
片や、先頭を走るエマのスリップストリームに乗り、2位を行く夏向。
夏向はエマの走りを『観察』する。
夏向「You’re great…Emma.君はこのコースをよく把握している。優れたドライバーは地道な準備を決して怠らない…。」
「想像以上に、君は手ごわい!!」
観察しているうちに、先頭集団はいつの間にか分裂していた。
実況・田中「ここに来て、先頭集団が2つのグループに分裂しています!!」
この状況について、田中より説明を求められた解説・須藤京一はこう述べた。
京一「私が見たところでは、先頭のエマ・グリーンがギアを切り替えています。86号車を後ろに従えたところから、一気にペースを上げましたね。スプリント力には定評のある片桐夏向ですが、余裕があるようには見えません。」
これには実況の田中も驚く。
田中「そうなんですか!?ということは、3位と4位の2台がついて来れないと!?」
京一「いえ。そこはまた若干事情が異なります。驚くべきことに、4位の諸星君が、3位のベッケンバウアーにプレッシャーをかけているんです。」
京一「おそらく、ベッケンバウアーは背後への警戒を強めているんです。前との間隔を少し空けることによって、動きの自由度を確保する意図があるんでしょう。驚きました。4位に転落したことによってそのまま後退していくものと思われましたが、いい意味で予想を裏切られました。」
「レースの行方がわからなくなりましたね。それぞれが間違いなく、勝てる力を秘めています。おそらく、最終ラップまでこのせめぎ合いが続くのではないでしょうか。」